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■winny事件について
今回はサイド1のエドウィン氏からリクエストを受けた、winny事件について書く。
資料と言っても殆ど無いに等しいため、あまり調べたわけではない。また、断っておくが、今回は完全に第三者的な意見を述べさせて頂く。あくまでも第三者であり、無粋な意見など聞く気は毛頭無い。この時期を選んだのも論議が大分終息へと向かい、不毛な議論に与さずに済みそうだからである。
さて、本題に入ろう。
▼winny事件が抱える問題点
5月10日に、winnyの開発者が逮捕されたニュースはネット上を瞬く間に駆けめぐった。
winnyとは、『日本で開発されたファイル交換ソフトの一つ。高い匿名性と、独自のP2P型匿名掲示板システムが特徴』のソフトである。
ネット上では作者である47氏の逮捕を巡る法的論議等が盛んに取り沙汰された。マスコミは容赦なく違法ツールの作者が逮捕されたというニュースを告げた。
その辺りの絡みはWinny開発者47氏逮捕祭ニュースを見て頂くとして、此処では散々論議された筈である幇助かどうか、等の話は割愛する。
しかし、この辺りを調べていく中で、一つ思い当たった事があった。
一つには、匿名掲示板は別として、個人ホームページや、寄せられた意見等を見ると、作者である47氏を肯定しているものが非常に多い。
もう一つには、使用を仄めかしていた意見等はタブー視されていたという事だった。
あまりにも当たり前な事である。
第一、「違法である」という意見は識者に聞けばすぐに帰ってくる言葉であり、面白みが無い。
だが、この二点はいずれも、そのような意見の面白みと言うよりは、自己弁護に繋がっている、と考えることが出来るのではないだろうか。
つまり、使用者が余りにも多いため、意見を述べる者が皆使用者という状態なのではないか、と思えるのだ。
使用者なればこそ、ツールが違法である事は認めたくないだろうし、かと言って違法性を持ち得る事は十二分に理解しているため、使用したことは書き記さない。
便宜上、ネットで述べられた意見を、ネット世論と呼ぶ事にするが、このネット世論は確実に使用者前提の意見になっていると考えられる。
従って、47氏を助ける等という意見が罷り通るような状態になっている。はっきり言ってしまえば、普通の状態ではない。常識的な意見や判断から外れてしまっている、そう言っていいと思われる。
ネット世論という権威に囚われない筈の意見が、ある一方向に明らかに偏っている。これはかなり異常な事だと思われる。
▼違法性
さて、ネット世論に於いて、winnyを使用している比率が多いのではないかという意見を先に述べたが、これがこの問題を一層深刻に難しくしている。
違法性の論議に於いても、まず、「何故違法なのか?」「違法である根拠は何か」という見地からスタートしている。
確かに、過去にこの類いの判例は存在していない。
だから、違法性は無い、なんてそんな意見まで横行している始末だ。
だからこそ、はっきり言おうじゃないか。
winnyには非常に沢山問題がある。間違いない。
それが皆判っているからこそ、自己弁護の為に違法性から目をそらそうとしているのだ。
そして、何故違法か、なんて論議はする意味もないと考える。
何故なら、それは使用者には判りきっている事だろうし、著作物が劣化するにせよ何にせよ、誰にでも手に入る状況下を作り出せるツールが、常識的に考え、著作物を作り出す人間が利益を生む状態かどうかと言えば、明らかに利益はない。むしろ損を被っているのは明白である。
法的にどうか等の意見の前に、誰かが損害を受けている中で一切手を出せない状況下が、道義的、倫理的に正しく、斯くあるべきだと言えるのかどうかは、言うまでもないだろう。
さて、利用者が全て悪いような書き方をしているが、実際はそこまで単純な問題ではない。
▼インターネットが抱える問題
インターネットは、かなりダーティな空間である。
これは利用者なら判って頂けるだろう。
著作権を有しているだろうと思われる物は盛んに流通し、簡単にコピーする事が可能である。
また、ネット上での考え方も「共有する事」であり、これは一般の倫理観とは大きく異なる。
その為か、一昔前も、winnyの様な物は存在していた。が、これほど大っぴらに流れていた訳ではない。
それはwarez等と呼ばれ、かなり難解な手段(winnyに比べれば、だが)を取らなければ入手が困難であり、その上倫理的な規定も無駄に多く、また敷居が高かったため、今ほど利用者が居たとは考えにくい。
その後、winmxが登場し、ファイルは交換という概念に変わった。今まではどこかにアップロードするだけでも手間だったが、winmxに於けるアップロードはそれほど手間は要らない。その上、交換するだけでファイルが手に入るとあってか、利用者は爆発的に増加する。そして、winnyである。
利用者数は一体どれだけ居るかは判らないが、その多さによってビジネスが成立するほどではあるようだ。
例えば、通信業界。
winnyやwinmxが出てきたことで、利用者は早い回線を求めるようになった。
光回線など、単純にインターネットを利用する上ではそれほど必要性があるとは思えない。せいぜいADSLまでであり、それ以上の回線を使いこなせる物は、少なくとも日本ではごく僅かだろう。
また、記憶媒体を販売する業者。
普通に使用して、それほどHDDは減っていく物ではない。
ゲームを何本もインストールすれば減っては行くだろうが、それにしても、何百Gも必要なソフトなど有りはしない。
また、CD-R、DVD-Rの類いは、コピーすら違法とするならば、違法ではない使用法の方が少ないのではないだろうか。
また、winnyの使用法などを明記した雑誌、書籍を販売した業者。
明らかに、利益の為に問題のあるツールを利用したその行為は、winnyやwinmxなくして成立する物ではない。その上、更に利用者を増加させるという行為そのものが、問題があると言えるだろう。
利用者の数が膨大である故に、それに荷担すると半ば判りながら儲けを得るため動くという姿勢を持った業者が居るという現実は、著作権遵守という考え方からは縁遠い。
敢えて問題がある面には目を瞑るという姿勢は、利用者のそれと大して変わらないと言えるだろう。
▼まとめ
利用者が莫大故に様々な弊害を齎すという、数が全てを制す様な状態に陥った今の状態は、明らかに好ましくない。
尚且つ、それを取り締まる側の警察にも利用者が居たりと、警察も人間とはいえ、示しのつかない失態も見える。
だからこそ、明確に問題がある、と言える人間が、この事件では大変少ない。
だが、この調子ならば、これからもwinnyの後継は出続けるだろうし、一旦利用した利用者が減ることはないだろう。
今までも、そしてこれからも、問題がある面には目を瞑りながらそういうやり取りはされる事になるだろう。それが正しいか否かではなく、新しいルールとして認めてしまう他無い。
逆に、それが出来ない限り、更に著しく安易で簡易なツールが出てくるだろうし、それを完全に止めることは出来ない。
インターネットは既に、人の手を離れ、制禦できない化け物のような存在になっているのかもしれない。 |
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