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■「萌え」は実在するのか?
萌えが何か問われ、即座に説明出来るという方は、恐らくごく少数だろう。そして、その説明も正しいとは限らない。
言葉の定義自体が極めて曖昧で、しかも多くの意味を統合した言葉のため、一口に説明出来るようなものではないのだ。
では「萌え」とは何か。
一つには、動植物、人、時には無生物などに対し向ける、愛情や好意の様な感情、若しくはその状態を指すとされている。対象が可愛い様子、無条件に愛でたくなる仕草、または動作などに対し使う事が多い。
ネット上では盛んに使われ、その萌えの度合いに関らず、躊躇することなく使われている。
しかし、ここで一つ疑問が生じる。仮に、以上に挙げたような意味ならば、何故敢えて、「好き」とか、「愛している」とか「可愛い」等という言葉を使わず、「萌え」という言葉を使うのだろうか。
一つには、「萌え」という言葉は「好き」とか「愛している」等よりも若干くだけた言葉だから、という事が挙げられるだろう。
故に、簡単に使えるため、盛んに使うのだ。
もう一つの理由を挙げるなら、「仲間意識」という奴だろう。仲間である人間が使うのだから、自分も使うという訳である。
以上の理由から、「萌え」という言葉は使われる。
さて、では本題に移ろう。
ネットでの文章には本気で言っていない言葉、即ち「ネタ」と、本気で言っている言葉が存在する。
本当には萌えていないのにも関らず、「萌え」と口にする事もあるだろうし、逆に、本当に萌えているため「萌え」と口にする事もあるだろう。
ここで確認するが、「萌え」という言葉はどの様な状況で使われるのだろうか。
モニタに映る二次元美少女に「萌え」と言ったり、曲線が多い機械に向けて「萌え」と言ったり、漫画の登場人物に対して「萌え」と口にしたりする。
では、現実に存在する人間に対し、「好き」や「愛している」の代替えとして「萌え」を使用できるだろうか。
答えは、「いいえ」である。「好きです、結婚して下さい」と恋人に対して言う事はあったとて、「萌えました、結婚して下さい」は、気の触れた空虚な言葉にしか聞こえない。
何故これが妙な言葉に聞こえるかというと、それは、相手が「萌え」という言葉を認識していないからである。
萌えという言葉はかなり狭い範囲でしか使われていない。従って、相手が「萌え」という言葉を認識していなければ、その時点でこの言葉は無意味になる。
もう一つは、先程も記した通り、「萌えは若干くだけた表現だから」という事が挙げられるだろう。
即ち、萌えという言葉は本気で言えるものではないのだ。
先に挙げた二次元美少女に萌えたりするという例も、全て、対象が物言わぬ相手である。即ち、萌えという言葉は萌えた対象に向けて使われる言葉ではなく、自分や、萌えという言葉を使う他者に向けて使われる言葉なのである。
ここから見えてくるのは、他者に向けて使われない、「萌え」が果たして現実世界で効力を発揮するのか? という事である。
答えは、「かなり難しい」だろう。結局自己か、萌えという言語を使う他者にしか効力を発揮しない以上、内に向けた閉じた言語なので、殆どが本気で言っていない言葉、即ち「ネタ」で使われる事が多いからである。
つまり、「萌え」は殆どが「ネタ」であり、実在するかどうかには疑問が生じるのである。
果たして「萌え」は実在するのだろうか? |
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